この治験は絶対にやめましょう

悪性胸膜中皮腫と診断され、これから抗がん剤治療を受けられる方、手術後に再発された方対象 標準療法(シスプラチン+ペメトレキセド)に新しいタイプの分子標的薬(トリプルキナーゼ阻害薬)を上乗せする治験のご案内

 

本ページは日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社からの委託による「手術の適用とならない悪性胸膜中皮腫患者さんを対象とした初回治療」の治験広告となります。

治験薬は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、繊維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)を標的とするトリプルキナーゼ阻害薬です。これら3つのタンパク質は腫瘍周囲の血管新生を促します。

 

標準治療(シスプラチンとペメトレキセド)

手術の適用とならない場合、「シスプラチン」と「ペメトレキセド」の併用療法が標準的な治療法とされています。この治療法は約10年間変わっておらず、より効果の高い治療法の開発が望まれています。

 

そこで、今回の治験は「シスプラチン」と「ペメトレキセド」の併用療法に開発中の新薬である「分子標的薬」および「プラセボ(偽薬)」を加え、効果が上乗せされるかと併用した時の安全性を確認するものです。

 

悪性胸膜中皮腫と診断され、これから抗がん剤治療を受けられる方、手術後に再発された方対象 標準療法(シスプラチン+ペメトレキセド)に新しいタイプの分子標的薬(トリプルキナーゼ阻害薬)を上乗せする治験

 

まず書き出しに、本ページは日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社からの委託による「手術の適用とならない悪性胸膜中皮腫患者さんを対象とした初回治療」の治験広告となります、とあります。次いで医学的解説が「手術の適用とならない悪性胸膜中皮腫の標準治療と治験薬について」として記載されています。

医学監修:北海道大学病院 内科 水柿英紀(Hidenori Mizugaki, MD,PhD

 

その中の矛盾点を記載してみたいと思います。

1.この中に図があります。まずこの図の中に大きな間違いがあります。

癌細胞は約2-3mm3以上になると血管から栄養を摂取します。それ以下の場合は組織周囲から栄養や酸素を摂取して増殖します。この段階での癌の診断をすることは現在の医療技術では不可能に近いと言えます。血管新生抑制剤を投与する段階では既に多くの血管ができてその血管から栄養を摂取しています。血管新生抑制剤という言葉は新たに血管ができるのを抑制するという意味で、薬剤の本質を見失っている解説と言えるでしょう。既存の血管を消失させる作用はありません。

 

2. 血管新生はVEGFのみで起こるわけではありません。医学雑誌サイエンスにはCOX-2/PGE2 pathway(経路)の重要性を説いており、COX-2阻害剤を使用することで迅速に有効性の高い癌治療法を開発できるだろうとしています。COX-2阻害剤併用は必須と考えます。治験薬のみの治験は人道上看過できない手法と考えます。

COX-2 Inhibition Potentiates Antiangiogenic Cancer Therapy and Prevents Metastasis in Preclinical Models

 

3. 「シスプラチン」と「ペメトレキセド」の併用療法が標準的な治療法とされています。しかしながら10数年前から血管新生在併用による悪性中皮腫の治療をCase Reportとして発表、治験届けもしています。しかしながら、行政上の不都合から治験届けは受理されていません。遅滞した標準療法との比較試験は無意味であり、患者にとっても残酷な結果をもたらすものです。

[A case report of disseminated malignant mesothelioma of peritoneum responding remarkably to thalidomide, celecoxib, vinorelbine and CDDP

 

2004年頃はまだ分子標的薬やVEGFの重要性は全く認識されておらず2017年になってやっと癌におけるVEGFの重要性が認識されてきました。この治験説明にも__手術の適用とならない場合、「シスプラチン」と「ペメトレキセド」の併用療法が標準的な治療法とされています。この治療法は約10年間変わっておらず、より効果の高い治療法の開発が望まれています。__とあります。過去10数年もの遅れた医療との比較試験ではプラセボにあたった患者さんは悲劇的です。

2004年に私はその点について指摘しています。

過去多くの症例報告を行ったが サリドマイド・セレコキシブと抗癌剤の併用効果に関して多くの査読者から疑問を呈されている。本症例においても「本例で抗癌剤との併用効果がありとする根拠がないと思われます。」と指摘されている。われわれは サリドマイドと抗癌剤の併用は腫瘍細胞の抗癌剤抵抗性を減弱し アポトーシスの閾値を低下させ その結果病状の安定と生命の延長が得られるという報告から有効と考えている

このような治験は行われるべきでないし、受けるべきでもありません。

 

2017.9.5

この治験はニンテダニブを併用した方が良好な結果がでています(2017.6.5)。プラセーボ(偽薬)に当たった人は悲運です。